「本当に美味しい中国料理が食べたい 」などの著書もある中国食文化研究所所長の中西純一さんによる中国料理の解説付で北京宮廷料理をいただける会にご招待いただきました。
わたしは以前から中西さんが主宰する中国料理を楽しむ催しに参加しています。いつもは有料の会ですが、本格的な中国料理をきちんと食べられる機会はなかなかないので、貴重に思っています。
元々の本格中国料理というのは、日本の懐石料理と同じで、主催されるホスト役による接待の場だったと、わたしは思っています。ホストがシェフと相談して旬の食材と客の好みを考えた献立を作り上げ、しばしば1週間前から仕込みをして出される料理です。
わたしは1歳半から4歳まで香港にいて離乳食は中国料理。帰国後も、母は香港時代の仲間と年に数回、横浜中華街で中国語で注文予約した食事会を楽しんでいました。親戚の集まりのときも、横浜中華街か、母がおいしいと舌で判断した中国料理店で予約していました。
中学時代は父が単身赴任した台湾に夏休み中、滞在して、地元の名士ご招待の宴席で燕の巣などもいただいたとき、ご招待くださった方が力説していたのは、一週間前から調理場に入り浸って、調理師等相談して、その日の献立を練り上げたことでした。
既存のメニューを見ながら当日料理を注文するのは、本来の本格的中国料理とは異なります。本格的な中国料理を楽しみたいなら、きちんと予約して、予算と好み等を伝えて、そのときおいしい食材を、そのときの客の顔ぶれに合わせて作ってもらいましょう。なじみの店ができれば、好みをわかっていてもらえ、その時々の接待したい相手に関する説明もすっと理解してもらえて、最適な料理を出してもらえるようになります。
医食同源の中国では、季節を加味してそのときどきの体調に合わせた料理を作り、さらに辛いものの後に、優しい味の料理を出すなど、料理と料理の組み合わせや順番にも心を配ります。
今回は中西さんが店長の張さんと入念に打ち合わせて、調理師(シェフ)の腕を存分にふるった料理を出していただきました。
中国料理は料理ごとに専門の調理師がいます。一般にこの店の規模であれば、調理師は3人いれば充分ですが、それぞれの料理に関するトップクラスの調理師を揃えたため、『涵梅舫』にはなんと5人ものトップクラスの調理師がいます。
最初のお話しでは1万円のコース予定でしたが、この技量も見せたい、あの味もふるまいたい…と、2万円くらい相当のコース。調理師それぞれが得意分野で腕をふるった、さすがの料理の数々を楽しませていただきました。目も舌も驚きの連続でした。
今回は全部詳しく見せちゃいますが、おいしそうだと思っても、「あれと全く同じコース」と頼むのはつまらないこと。季節がちがい、食事する人が違えば、同じ名前の料理でも、中身が変わっていくのが中国料理のすごさであり、技でもあります。どうしても食べたい料理があったら「あれはいまの時期でも食べられます?」と聞いて、大丈夫ならその一品を入れてコースを組んでもらいましょう。自分のときはどんな料理で驚かせてくれるか、どんな味との出会いがあるか…ぜひ、予約して頼む本格中国料理のワクワクを楽しんでください。